セキュリティ

ホテル・旅館が生成AIを使う際の個人情報保護・情報漏洩対策

執筆者 濵中 俊哉

執筆・監修:濵中 俊哉

株式会社SaunaTrip 代表取締役/講師

ホテル・旅館の生成AI活用が広がる一方で、見落とされがちなのが個人情報保護・情報漏洩のリスクです。宿泊業は氏名・住所・連絡先はもちろん、外国人宿泊者のパスポート番号など、扱う個人情報の機微度が他業種より高い業界でもあります。

この記事では、宿泊業特化で生成AIの活用を支援している当社が、生成AI導入時に押さえるべき個人情報保護のポイントと、今日から現場で使える対策をまとめます。

この記事でわかること

  • ホテル・旅館が生成AIを使う際に特に注意すべき理由
  • 生成AIで情報漏洩が起きる主なパターン
  • 今日から現場で使える対策チェックリスト
  • ChatGPT・Claudeで「学習に使わない」設定にする方法

なぜホテル・旅館は特に注意が必要か

ホテル・旅館は、旅館業法により宿泊者名簿(氏名・住所・職業・宿泊日など)の記載・保管が義務付けられています。さらに外国人宿泊者からはパスポート番号の記録も必要です。これらは他業種の一般的な顧客情報より機微度が高く、漏洩した場合の影響も大きい情報です。

生成AIを使えば、こうした宿泊者情報を含む業務(問い合わせ対応の下書き、名簿の整理、口コミ対応など)を効率化できますが、便利さの裏で「入力した情報がどう扱われるか」を理解しないまま使うと、思わぬ形で情報が外部に渡ってしまうリスクがあります。

生成AIで情報漏洩が起きる主なパターン

① 入力データがAIの学習に使われる

無料版や個人向けプランの生成AIサービスの中には、入力した内容がサービス改善・モデルの学習に利用される設定になっているものがあります。宿泊者の氏名や問い合わせ内容をそのまま入力すると、意図せず個人情報を外部のAI事業者に渡すことになりかねません。

② 人為的な誤操作・誤共有

実際に多いのは、AIそのものの不具合よりも使う側のミスです。複数の宿泊者情報が混在したデータをそのまま貼り付けてしまう、生成した文章を確認せず外部に送ってしまう、共有アカウントで誰でも過去の入力履歴を見られる状態になっている、といったケースです。

③ 外部ツール連携時のデータ受け渡し

PMS(宿泊管理システム)や予約サイトのデータをAIに連携して使う場合、連携設定の範囲によっては必要以上の個人情報までAI側に渡ってしまうことがあります。エージェント型AIのように複数のシステムに接続して自律的に動くツールほど、この設定確認が重要になります。

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今日からできる対策チェックリスト

  • 個人情報は入力しない、または匿名化してから入力する——氏名や連絡先を「お客様A」のように置き換えるだけでもリスクは大きく下がります
  • 法人向け・学習に使われないプランを選ぶ——多くの生成AIサービスには、入力データを学習に使わない設定やビジネス向けプランが用意されています。契約前に必ず確認します
  • 入力してよい情報の範囲をルール化する——「氏名・連絡先はNG、業務内容の相談はOK」のように、誰が見ても迷わない基準を文書化します
  • アカウント・利用履歴の管理を徹底する——共有アカウントの利用は避け、退職者のアカウントは速やかに削除します
  • 外部ツール連携の権限範囲を確認する——AIに渡すデータの範囲を必要最小限に絞ります

個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用にあたって入力する情報の取り扱いに注意するよう注意喚起を出しています。ルール整備の際は、こうした公的機関の情報もあわせて確認しておくと安心です。

ChatGPT・Claudeを「学習に使わない」設定にする方法

個人情報を入力しない運用に加えて、そもそも入力内容がAIの学習に使われないよう設定しておくと、より安全に運用できます。主要サービスの設定方法をまとめます(2026年8月時点、個人向けプランの場合)。

ChatGPT(OpenAI)

  1. 1画面左下のアカウントアイコンから「設定(Settings)」を開く
  2. 2「データコントロール(Data Controls)」を選ぶ
  3. 3「すべての人のためにモデルを改善する(Improve the model for everyone)」をオフにする

Claude(Anthropic)

  1. 1画面左下のアカウントアイコンから「設定」を開く
  2. 2「プライバシー」を選ぶ
  3. 3「AIモデルの改善にご協力ください」のトグルをオフにする

法人・チーム向けプランの多くは、個人向けプランと異なりデフォルトで学習利用が無効になっています。スタッフに広く使わせる場合は、個人向けの無料アカウントではなく法人向けプランへの切り替えを検討するのが安全です。

エージェント型AIを使うときに追加で気をつけたいこと

生成AI活用事例7選で紹介したような、複数のシステムに接続して自律的に業務を進めるエージェント型AIは、チャット型AIより便利な分、扱えるデータの範囲も広くなります。導入する際は「どのシステムに」「どの範囲まで」アクセスさせるかを事前に設計し、必要以上の権限を与えないことが重要です。

まとめ:ルールを決めてから広げる

  • ホテル・旅館は宿泊者名簿・パスポート番号など機微度の高い個人情報を扱う。生成AI導入時のルール整備は必須
  • 情報漏洩の多くは、AIそのものより「入力する側の運用」に原因がある
  • 入力してよい情報の線引きと、法人向けプランの選定を最初に決めてから、現場への展開を広げる

「自社の場合、どこまでルール化すればいいか分からない」という場合は、当社の宿泊業向け生成AI研修の無料相談で、個人情報の取り扱いを含めた運用ルールの整理からサポートしています。

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よくある質問

無料版の生成AIは業務で使ってはいけませんか?
一律に禁止する必要はありませんが、個人情報を含む業務では法人向け・学習に使われないプランの利用をおすすめします。無料版を使う場合は、個人情報を入力しない運用を徹底してください。
すでに宿泊者情報を入力してしまいました。どうすればいいですか?
利用しているサービスのデータ削除・オプトアウトの手順を確認し、必要な対応を行ってください。今後同じことが起きないよう、入力ルールの周知もあわせて行うことをおすすめします。
スタッフ全員に同じルールを徹底するにはどうすればいいですか?
ルールを文書化するだけでなく、実際の業務を題材にした研修で「何がOKで何がNGか」を体験してもらうと定着しやすくなります。

この記事を書いた人

執筆者 濵中 俊哉

株式会社SaunaTrip 代表取締役/講師

濵中 俊哉Toshiya Hamanaka

東京大学大学院修了後、アクセンチュア株式会社に入社。

通信・ガス・EC・旅行業界など、さまざまな業界の生成AIコンサルティングに従事。生成AIチャットボット構築、AI活用組織の立ち上げ、AIエージェント導入を通じ、数千万円規模の業務効率化の実績あり。

プライム市場企業向けの生成AI研修を複数実施し、AI未経験の社員がAIエージェントツールを使いこなせるようになるまで一気通貫で支援。

参考資料

※本記事は一般的な注意点の解説であり、個別の法的判断を保証するものではありません。個人情報の取り扱いに関する具体的な対応は、必要に応じて専門家にご相談ください。

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